それを聞いたときの、ロビンの、軽蔑したような目は、忘れられません。

「お前は最低な人間だな。後日であっても、プレゼントを渡そうと思ってくれた、その気持ちが有難いと思わないのか。」
 吐き捨てるようにそう言った後、私が言葉を返す間もなく、彼は友人らと共に去って行ってしまいました。

 私は、誕生日とかイベントに拘るという話を聞いて、とっさに、プレゼントを「渡す」側の立場で考えたのですが、彼は、私が「受け取る」側の立場で答えたと考えたのでしょう。

 私だって、貰う側であれば、それが後日であったとしても、もちろん嬉しいですし、有難いと思います。ですが、そのような誤解を解く暇もありませんでした。


 そのような小さな誤解の積み重ねが、互いの溝を深めていきました。私は、それでも機会がある度にコミュニケーションをはかろうと努力しましたが、ロビンは私の言動を、全て悪い方向に解釈しているようでした。

 ですが、愚かな私は、それでもまだ、甘い期待をしていました。
 彼なら、いずれ、本当の私を分かってくれるのではないかと。なんといっても婚約者なのだから、いつか、物語に出てくる主人公たちのようにわだかまりを解消して、これまでの分も仲良くなれるのではないかと。

 愚かに期待をした分、彼から婚約破棄を告げられたときの衝撃は、本当に大きなものでした。全く無防備だった心を、いきなり刺されたような痛みです。

 彼は私のことを、どうしようもなく浅はかで、低俗で、性格の悪い人間だと思っている。そして、その認識は決定的なものである――、その事実に、ようやく、私は気付いたのです。