夜の浜辺、その女性は海を眺めていた。
どこか悲しそうで、月明かりに照らされた
女性の頬を光るものが伝った・・
それを見た僕は・・胸が締め付けられる感じが
した。
そんな感覚は今までなかった・・

その日から僕は満月の夜が待ち遠しかった。
夜に現れる彼女を見るたびに切なくなる。
なぜ・・悲しい顔をしてるの?
僕には 悲しい感情がわからない・・
天使には不の感情がない。
不の感情は憎しみを生み、やがて争いになるから
だ。
あから他の天使に聞いても分からないと言う・・

僕はある日大天使様に聞いてみた。
「悲しい感情とは、どんな思いなのですか?」
「悲しいとは、大好きな人や物が自分の目の前から
消えてしまった時に思う気持ちかのう。」
「そんな気持ち・・わからないです。」
「この世界ではありえない話ですから・・」
そう、この天使の世界では陽の感情のみ。
陰の感情は、悪魔が支配している。
そして、昼間は天使の世界、夜は悪魔の世界としてなりたっている。
とうてい彼、レイチェルの想像できない感情がそこにはある。
「僕は彼女に会いたい。」
レイチェルは濁りなき瞳で大天使を見つめた。
「それは叶わん願いじゃ!」
大天使はそれを、ゆるぎない太陽がごとく拒絶した。
「なぜです、大天使様。天使には一度だけどんな願いでも叶える権利を
与えられるのでは・・。」
「それを、今叶えようと申すのか?。」
「はい。」
「じゃが・・天使が人間界に降りても人間には光に包まれた天使の姿は見えぬぞ・・
かと言って夜は悪魔の支配する世界・・たちまち悪魔に殺されてしまう・・。」
「わかっています。」
「なら、なぜ・・」

「僕を人間にして下さい!。」