「”この遺伝子の発祥を見たい“、そう願った人が居たんだ」

「誰?」

「俺達の機関のトップだよ」

「なんで…」

「俺の失敗は機関存続を揺るがした。その為の修行だからかなり重要なことだったんだ。俺と同じで…トップも俺の名前のルーツである場所に行ったほうがいいって思ってたんだ。それで発祥現を見せてもらう為にトップは俺の為に願いを使った。叶えたのはグループのリーダーだった」

「私が…見えたの?」

「ヨヅキ…去年の春。俺と出会う前、君は死のうとしてたよね?」

「っ…なんで…」

「教えて欲しい。何があったのか」

すごく躊躇した。
これ以上苦しかったことを言葉にするのが怖い。
またあの頃の感情を思い出すことで私の心はぐちゃぐちゃになってしまうかもしれない。

でも私の過去が春華にとっても重要なんだ。
あの春の出来事が春華へと繋がっていくんだ…。

「お姉ちゃんが一番荒れてた時をなんとか乗り越えて…私も高校生になって、お姉ちゃんから“子どもができた”って連絡が来た頃だった。“できた”っていっても妊娠してから随分経ってて、あと二ヶ月後には産まれそうな時期だった。前にも言ったけど、お姉ちゃんに子どもができてから、“あぁ、私ほんとに一人になったんだな”って思ったの。お姉ちゃんはもう私のお姉ちゃんじゃなくて、この子のママなんだって。これからは一人でどうにか生きていかなきゃいけないって」

「やっぱりママさん達には言えなかった?」

「言えなかった。何が辛いのかきっと理解もされなかったと思う。私だって漠然とした気持ちで、言葉になんてできなかったから」

「うん…」

「ある日急にふっと燃え尽き症候群みたいになっちゃって。頭の中はずっとふわふわしてるし、なんかもう全部がダルくて…春休みだったし親に無断で外泊したんだ」

「外泊?」

「そう。先輩…って言っても元々お姉ちゃんが荒れてた時の友達で、その人がうちに来ていいよって言うから二日間泊まりに行ったの」

「男?」

「女」

ちょっとムスッとした春華の表情が可愛くて、こんな話をしているのに面白かった。
嫉妬してくれたんだって思ったら嬉しかった。