もう一時間くらい経つのに春華が帰って来ない。

春華はスマホを持っていないから連絡のしようも無い。

近くのコンビニに行っているのなら、うちから一番近くにあるお店は“コンビニ”じゃ無い。

近所のおばあちゃんがやっている小さな商店で、コンビニよりも全然品揃えは少ないし、雑誌も料理か旅行、俳句とかの本で、花火だって置いていない。

駄菓子やパン、お惣菜なんかを買うのに時々利用するし、おばあちゃんが優しくて可愛いから、近所の主婦達もちょっと調味料を買いに、とかで利用者は割りと多かった。

でも春華が興味を持ちそうな物はあまり無いように思う。
おばあちゃんとお喋りしてるのなら一時間くらい許容範囲か…?とも思ったけれど、私と一緒に立ち寄ったこともそんなに無かったから考えにくい。

胸がそわそわしてきた。

ひょっとして春華の世界の誰かが春華の為に願ったんじゃないか。
そしてあっという間にこの世界から消えてしまったんじゃないか。

そう思うともう居ても立ってもいられなくなって、私は家を飛び出した。

ママは今日はお友達とランチに行っていて、まだ帰っていない。
久しぶりだから遅くなるかもって言っていたから夜ご飯も春華と二人で済ませるつもりだった。

六時。
外はまだまだ明るいけれど不安はどんどん大きくなる。

真夏の夕方はまだまだ暑くてしんどいけれど、私は春華を探して走った。