目を閉じて三秒。
ゆっくりと目を開けたらアイスカフェオレのグラスをまたかき混ぜながら、目の前の友達は不思議そうに私を見た。
「夜月」
「うん」
「私達、今なんの話してたっけ?」
「え?」
「うわー。ヤバくない?突然の物忘れ」
こわーいって言いながら友達は笑った。
「えっと…なんだっけ…私も忘れちゃったかも」
「あはは。うちらヤバいよ」
友達はカフェオレを飲んで顔をしかめて「本当は苦手なの、カフェオレ」って言った。
「牛乳が全く飲めなくてさ。なのになんでか今日はアイスオレ頼んじゃった。なんでだろ」
「私も…本当はね、ココア嫌いなの」
「そうなの?もー、今日のうちらどうしたんだろうね」
「それとね、アイスオレも飲めない。私も牛乳が大嫌いだから。でもね、唯一飲めるアイスオレがあって、コンビニとかで売ってるんだけど、尖ってない円すいみたいな形で、百円台で買えるのに小さい頃の私には高級品だった。時々ママが買ってくれるのが嬉しくて幸せで、私ね、ママに″これが大好き″って言い続けたの。まだ売ってるのかなぁ」
「んー、たぶん、私が思ってるのだったらまだ売ってるよ」
「そうなんだ!懐かしいなぁ」
「今度一緒に買いに行こうよ」って言いながら友達はスマホを見た。
「あー、夜月ごめん!この後ショッピングの約束してるんだよね。夜月も一緒に行く?」
見せられたトーク画面はクラスメイトの女子との物だった。
「ううん。私も約束してて」
「そっか。じゃあまた明日、学校でね。良かったらまた遊び行こうよ」
「うん、そうだね」
手を振って友達はカフェを出ていった。
完全に姿が見えなくなってから、友達が座っていた場所に春華が移ってきた。
「成功…したの?」
「うん。良かったね」
「親友って、約束してるって言ってた子?」
「さぁ?そうかもね?どんな子なの?」
「初めて同じクラスになった子だからあんまり知らないけど、いつも教室で小説読んだりしてて、物静かだけど話したら可愛い顔で笑うの」
「そっか」
「本当に成功したの?」
「″また学校でね″って言ってたじゃん」
「私に関わることなのになんで私の記憶は消えてないの?」
「…なんでだろうね。夜月自身の願いを叶えたわけじゃないからかな」
「でもクリスマスの時は誰も…!」
「ごめん。俺もよく分かんないや」
春華が席を立った。
腑に落ちないけれど私も一緒にカフェを出て、それ以上は何も聞かなかった。
それよりも家に帰ったらママが居るはずで、普通に話ができるか、ママの気持ちは落ち着いているか、それが気になって仕方なかった。
朝、家を出る時にはママはまだリビングで眠っていた。
そばには睡眠薬の袋が散らばっていた。
手の平にはうっすらと青あざができていた。
私の顔にも体にもあざはできていなくて、同じ力で殴られていたはずなのに不思議だった。
ゆっくりと目を開けたらアイスカフェオレのグラスをまたかき混ぜながら、目の前の友達は不思議そうに私を見た。
「夜月」
「うん」
「私達、今なんの話してたっけ?」
「え?」
「うわー。ヤバくない?突然の物忘れ」
こわーいって言いながら友達は笑った。
「えっと…なんだっけ…私も忘れちゃったかも」
「あはは。うちらヤバいよ」
友達はカフェオレを飲んで顔をしかめて「本当は苦手なの、カフェオレ」って言った。
「牛乳が全く飲めなくてさ。なのになんでか今日はアイスオレ頼んじゃった。なんでだろ」
「私も…本当はね、ココア嫌いなの」
「そうなの?もー、今日のうちらどうしたんだろうね」
「それとね、アイスオレも飲めない。私も牛乳が大嫌いだから。でもね、唯一飲めるアイスオレがあって、コンビニとかで売ってるんだけど、尖ってない円すいみたいな形で、百円台で買えるのに小さい頃の私には高級品だった。時々ママが買ってくれるのが嬉しくて幸せで、私ね、ママに″これが大好き″って言い続けたの。まだ売ってるのかなぁ」
「んー、たぶん、私が思ってるのだったらまだ売ってるよ」
「そうなんだ!懐かしいなぁ」
「今度一緒に買いに行こうよ」って言いながら友達はスマホを見た。
「あー、夜月ごめん!この後ショッピングの約束してるんだよね。夜月も一緒に行く?」
見せられたトーク画面はクラスメイトの女子との物だった。
「ううん。私も約束してて」
「そっか。じゃあまた明日、学校でね。良かったらまた遊び行こうよ」
「うん、そうだね」
手を振って友達はカフェを出ていった。
完全に姿が見えなくなってから、友達が座っていた場所に春華が移ってきた。
「成功…したの?」
「うん。良かったね」
「親友って、約束してるって言ってた子?」
「さぁ?そうかもね?どんな子なの?」
「初めて同じクラスになった子だからあんまり知らないけど、いつも教室で小説読んだりしてて、物静かだけど話したら可愛い顔で笑うの」
「そっか」
「本当に成功したの?」
「″また学校でね″って言ってたじゃん」
「私に関わることなのになんで私の記憶は消えてないの?」
「…なんでだろうね。夜月自身の願いを叶えたわけじゃないからかな」
「でもクリスマスの時は誰も…!」
「ごめん。俺もよく分かんないや」
春華が席を立った。
腑に落ちないけれど私も一緒にカフェを出て、それ以上は何も聞かなかった。
それよりも家に帰ったらママが居るはずで、普通に話ができるか、ママの気持ちは落ち着いているか、それが気になって仕方なかった。
朝、家を出る時にはママはまだリビングで眠っていた。
そばには睡眠薬の袋が散らばっていた。
手の平にはうっすらと青あざができていた。
私の顔にも体にもあざはできていなくて、同じ力で殴られていたはずなのに不思議だった。