「おかえりなさい」って、帰宅した私を出迎えたママはニコニコしていたのに、「学校辞めようと思う」って聞いた瞬間に鬼の形相になった。
この顔のママを、私はよく知っている。
お姉ちゃんと殺し合わんばかりに争っていた頃のママだ。
「冗談でしょ?」
「ほんとだよ」
「何言ってんの?三年生にもなって…もうすぐ夏休みじゃない」
引きつった表情で私を見る目。
お姉ちゃんもずっとこんな想いだったのかな。
学校にも味方が居なくて、もう傷つけたくなくて自分で自分を壊そうとした。
私は関心を向けてもらえなくて自分ばっかりを可哀想ぶって、お姉ちゃんは家族にも守ってもらえなかった。
私は違う。
冷静に考えれば分かる。
親友の言う通りだ。
あの子はただの被害妄想なんだから放っておけばいい。
それで人生が変わったなんて言われたって逆恨みだ。
そう言ってあとちょっとやり過ごせばいいのに、ママとの関係を脅かしてまで守るものじゃないのに、私にはそれができなかった。
「もうあとちょっとでも無理なの」
「なんで…なんでそんなこと言うの…」
「友達が私のせいで退学するんだって」
「は?なんで?」
「私と親友の仲がいいから疎外感を感じるって」
「疎外感?…いじめたの?」
「絶対にやってない」
「だったらほっとけばいいじゃない!なんであんたが身代わりになってあげなきゃいけないのよ!何言ってるか分かってんの!?」
「分かってるよ!だって私、お姉ちゃんをいじめてたあいつらと一緒だって言われてんだよ!?教室中からそんな目で見られてどんな顔して行けばいいのよ!」
「堂々としてればいいじゃない!もう一人の子は普通に行くんでしょ?」
「その子を守る為でもあるんだよ。私のせいだって言えば丸く収まるんだから」
「バカなこと言うんじゃないわよ!あんたもお姉ちゃんみたいになんの!?」
バシッて渇いた音がリビングに響いた。
エアコンで冷えたのか、元々そうなのか、ママの冷たい手の平が私の頬を叩いた。
ママが言ってることは正しい。
なんで私が身代わりになって今までの時間を捨てなきゃいけないのか。
親なら当然の怒りだと思う。
だけど「お姉ちゃんみたいになる」、その言葉が、今でもお姉ちゃんのことを否定する言葉が、私を後戻りできなくした。
この顔のママを、私はよく知っている。
お姉ちゃんと殺し合わんばかりに争っていた頃のママだ。
「冗談でしょ?」
「ほんとだよ」
「何言ってんの?三年生にもなって…もうすぐ夏休みじゃない」
引きつった表情で私を見る目。
お姉ちゃんもずっとこんな想いだったのかな。
学校にも味方が居なくて、もう傷つけたくなくて自分で自分を壊そうとした。
私は関心を向けてもらえなくて自分ばっかりを可哀想ぶって、お姉ちゃんは家族にも守ってもらえなかった。
私は違う。
冷静に考えれば分かる。
親友の言う通りだ。
あの子はただの被害妄想なんだから放っておけばいい。
それで人生が変わったなんて言われたって逆恨みだ。
そう言ってあとちょっとやり過ごせばいいのに、ママとの関係を脅かしてまで守るものじゃないのに、私にはそれができなかった。
「もうあとちょっとでも無理なの」
「なんで…なんでそんなこと言うの…」
「友達が私のせいで退学するんだって」
「は?なんで?」
「私と親友の仲がいいから疎外感を感じるって」
「疎外感?…いじめたの?」
「絶対にやってない」
「だったらほっとけばいいじゃない!なんであんたが身代わりになってあげなきゃいけないのよ!何言ってるか分かってんの!?」
「分かってるよ!だって私、お姉ちゃんをいじめてたあいつらと一緒だって言われてんだよ!?教室中からそんな目で見られてどんな顔して行けばいいのよ!」
「堂々としてればいいじゃない!もう一人の子は普通に行くんでしょ?」
「その子を守る為でもあるんだよ。私のせいだって言えば丸く収まるんだから」
「バカなこと言うんじゃないわよ!あんたもお姉ちゃんみたいになんの!?」
バシッて渇いた音がリビングに響いた。
エアコンで冷えたのか、元々そうなのか、ママの冷たい手の平が私の頬を叩いた。
ママが言ってることは正しい。
なんで私が身代わりになって今までの時間を捨てなきゃいけないのか。
親なら当然の怒りだと思う。
だけど「お姉ちゃんみたいになる」、その言葉が、今でもお姉ちゃんのことを否定する言葉が、私を後戻りできなくした。