なんであの子がそんな風に思ってしまったのかは本当に分からない。

私と友達の間には、確かにあの子とよりも思い出は多い。

共通の話題も、面白いと感じることも多い。

でも仲間外れにしたことなんて無いし、悪口だって言ってない。

私達はそう思っていた。

思っていた、だけだ。
相手がどう思ってるかなんて考えもしなかった。

私達が二年生の頃の思い出話をするたびに、
あの子が知らない人の話をするたびに、疎外感を感じていたのかもしれない。

学校に来ることが苦しくなるほどに…私達は追い詰めていたの?

机のサイドに掛けていた鞄を取って、教室を出た。

教室全体が無言で、ホームルームまでは普通に話をしていたのに、一瞬で私は孤独になったみたいだった。

こんな状況も、担任は想像したかなって考えた。

みんなの前であの子の退学を告げる時。

みんなの前で私達に職員室に来てって告げる時。

真実かどうかも分からないのに、その一言で私達は一方的に犯人になる。

そうやって心の中で担任を責めてみたけれど、あの子が感じていた悲しみは、きっと本当なんだと思う。

私達は“友達”になれていなかった。
かけがえの無い青春時代を、暗い物にしてしまっていたのだろう。

教室を出た私を唯一追いかけてきてくれたのは、やっぱり親友だった。

「本当にごめん」

「夜月、今からでも撤回して。なんであんたが辞めなきゃいけないのよ」

「そうすれば丸く収まるよ。私が庇って辞めただけで、本当に被害妄想だったんだってなるか、私が意地悪をしてただけで、だから辞めたって思われるかは分かんない。でもどうなってもあなたは大丈夫だから」

「何が大丈夫なの!私は親友を無くしちゃうんだよ!」

「…あの子が戻ってきたら一緒に居てあげてね。それがあなたを守ることにもなるから」

「無理だよ。あいつの被害妄想のせいで夜月の人生を壊したんだって、私きっと許せない」

「お願い。偽りでもいい。卒業するまで。あの子と友達でいてあげて。そしたらみんなだってどうせ忘れるよ…。こんなことも私のことも。あなたは自分の人生を守って。お願い。その為なら私は“犠牲”だなんて思わない。大切な人の人生を守れるなら」

「夜月…夜月!待ってよ!ねぇ!」

私は振り返らなかった。

ごめんね。私は逃げたんだよ。
こんな綺麗事を言って、この場所に残るのはあなたなのに。

誰にも守ってもらえなかったお姉ちゃんのことが頭の中から離れない。

家族を、お姉ちゃんを変えてしまったあいつらと同じにはなりたくなかった。

クラスメイトの言う通りだ。

いい子ぶって、逃げて、忘れられることを私は願っていた。