七月。

梅雨が明けて湿度がマシになったと思ったら、すぐに息苦しい夏になった。

湿度はマシになったのに太陽の熱は増して、日差しの下では目を開けていることすらツラかった。

夏休みを二週間後に控えていた放課後のホームルーム。

教卓の前に立った担任が、クラスメイトの女子が退学を決めたことを告げた。

教室が一瞬ザワついて、みんなの視線が私ともう一人の女子に集まった。

退学を決めた女子は私達のグループだったから。

その子は一週間前からずっと学校を休んでいた。
学校を休みがちになった頃からなんかよそよそしいなとは思っていたけれど、追求はしなかった。
何か事情があるのかもしれないって思ったから。

友達なら追求するべきだったのかもしれない。
学校を休んでいても、風邪だろうって思っていた。

だけど担任は続けて言った。
私ともう一人の子と、一緒に放課後、職員室に来て欲しいと。

みんなが思っているんだろう。
私達の中で何かがあったんだって。
一人を退学に追い込むくらいの何かが。

でも何も無い。
お姉ちゃんのことを春華に話したばっかりだったから私自身も過敏になっていた。
でもイジメなんて誓って絶対にやっていない。

職員室にやって来た私達に男性教師は控えめに訊いた。

「最近変わった様子はあった?」

「…分かりません」

友達の言葉に頷いた。
二人は、冬休みに一緒にお年玉を持って買い物に行った友達だ。
あの時は本当に普通で、あんなに楽しそうに恋バナしてたのに。

「私も分かりません。冬休みには一緒に遊びにも行ったし放課後も一緒に帰ったりしてたし」

「なんで退学するんですか?いきなりすぎます」

「そうだよね。先生もそう思うよ。でもね…学校に来づらいって言うんだ」

「なんでですか?私達が居るのに?」

「その…言いにくいんだけどね…。“君達が居るから”疎外感を感じて怖いんだって」

私達は顔を見合わせた。
たぶん鏡みたいに、私達は同じような表情をしていたと思う。