ようやく春華も覚悟を決めて、私は自分のベッドに、春華は布団を敷いて潜り込んだ。

電気を消したら真っ暗で、だんだんと目は慣れてきたけれど、二人の声だけが宙に漂っているみたいで不思議だった。

もしも魂があるのなら、死んでしまって体から抜け出したらこんな感じなんだろうか。

「春華の世界は正しいんだと思う」

「何が?」

眠たそうな声だった。
私もいっぱい泣いたからかすごく眠たくて、このまま春華の静かな呼吸と一緒に溶けていけたらいいのにって思った。

「家族っていうサークルが無ければこんなに悲しい気持ちも知らなくて良かったのかな。他人だったら良かった。家族だからもっと苦しい。憎み切れれば良かったのに」

「でも家族が…」

「支えになってる人も…居るよね…きっと…」

春華からの返事はもう返ってこなかった。

あんなに一緒に寝ることを拒んでいたくせに、私よりも先に眠ってしまった。

どうなったっていいって言ったのは本当だよ。
消えない傷を春華に作って欲しかった。

心じゃなくて、体に残る痛みを。

そしたら記憶が君を忘れてしまっても、
きっと繰り返し思い出せる気がしたから。

そうなりたかったから。