「ヨヅキは大丈夫だから。大丈夫…信じて…」

「何を根拠に…」

「今はもしかしたらね…?もしかしたらヨヅキは自分が人より底辺に居るって思ってるかもしれない。でも絶対に幸せになって人より笑える日がくるから…大丈夫だよ」

「そんなの何を信じてその日まで頑張ればいいの…。お姉ちゃんは散々家族を掻き回してさっさと幸せになったかもしれない。パパは愛想尽かして出ていくし、ママは頑張らなきゃって言い聞かせて平気なフリしてる。本当は平気なんかじゃないんだよ。だから春華を連れてきた時だって常識的には考えられない行動してるじゃん。私だって…私だっておかしいんだよ」

「ヨヅキの何がおかしいの?」

「春華になら利用されたっていいって思ってる。一番になれるなら…私の中で絶対的な存在になってくれるなら。私が生きていく為に…ずっと居て欲しいんだよ!」

「ごめん…ごめんなヨヅキ…」

春華は私を抱き締めるけれど、どうせ居なくなるならこれ以上春華の体温なんて知りたくないって思った。

どうせ私は忘れるけれど、春華のちょっと高めの体温も、声変わり途中のハスキーがかった、ちょっと高めの声も、私の名前を呼ぶ口調も、春華の名前すらも私は忘れてしまう。

素直に「好きだからそばに居て欲しい」って言えたら良かったのに。

私が生きていく為なんかじゃなくて、
一人ぼっちになることが怖いからじゃなくて、
ただ春華が好きだから居て欲しい。

「春華、言ったよね」

「ん?」

「私が春華を忘れるその日まで、一緒に居てくれるんだよね」

「うん」

「好きだよ」

「うん…」

「その日まで、春華を忘れてしまう日まで、私は絶対に春華が好きで、一番大事だよ」

「俺も。ヨヅキが好きだよ」