二千二十四年になった。
三学期を迎えて、私はまた学校に通う毎日が始まった。

冬休み中、貰ったお年玉を持って友達と服を買いに行ったり、映画やカラオケに行った。
誰と過ごしていても頭の中には春華が居て、私が居ない間に誰かの願いを叶えているかもとか、もし失敗してたらどうしようとか一日中考えた。

「二学期の終わりくらいから一緒に居る子、ほんとは彼氏?」

「年下の彼氏!?」

一緒に遊んでいた友達に訊かれて、私は首を振って否定した。

「従兄弟だって」

「えー?本当に?どこの学校?中学生だよね?」

「んー…ちょっと色々あってさ。不登校なんだ。今うちで預かってんの」

「じゃあ、あの子ずっと夜月んちに居るんだ!?けっこう可愛い顔してるよね。そんな子がずっと居たら緊張しちゃうかも」

「ほんとほんと」

「いや従兄弟だからねぇ」

友達たちは楽しそうに恋バナを始めた。
女子高生はいつでもどこでもちょっとのキッカケで恋バナを発動させる能力を持っている。
これは春華の世界でもそうだろうか。

私達にはこれくらいの能力で丁度いいんだ。
特殊能力なんて持っていたら、やっぱり苦悩のほうが多そうだから。

友達たちの恋バナに相槌を打ちながら好きな人、って考えてみた。

最初に脳内に浮かぶのは春華だ。
私は春華のことをどう思っているんだろう。
もちろん、他の人達とは違う特別感は抱いている。
春華が他の人に私と同じように接したら嫉妬もすると思う。

でも春華に本気で恋をしてしまったら、それは無謀すぎる。
百パーセントの別れが決まっているのに。

自分が悲しむのが、傷つくのが怖いから″好きな人″を誤魔化すことだって…きっとある。