「じゃあさ、何からやろうか。ていうかさっきのサンタでもう力は使ってるけどね。ノルマってあるの?」

「ちゃんとした数字は設定されてない。失敗したらリーダーに信号が送られるってだけ」

「失敗したらどうなるの?」

「俺と無関係のことで失敗したら、今度こそ力を抹消される。俺と関係のあることだったら向こうでまた見習いから特訓かな」

「春華と関係あることだったらまだ大丈夫なの?」

「俺のことだったらなんとでも言えるからね。その願いは無効だったみたい、やり直そっか、とかね」

「それってズルい。だってその人は二回、願いを聞いてもらえるんでしょ?」

「いや、俺がしらばっくれるだけで、実際に願いはカウントされるんだ。だからその一回でおしまい。あとは信号を飛ばして、リーダーにその人の記憶を消してもらうだけ」

「でも失敗って稀なんでしょ?」

「うん。だから罪が重いんだ。そうやって言い逃れしようって口裏合わせのほうが本来は無意味だから」

「そうだね。じゃあなるべく多く数をこなして、一年後には誰かが願ってくれるように頑張ろうね」

「その前にヨヅキも願いを考えておいてね」

「別にいいのに」

「ダメだよ。俺がヨヅキにしてあげられることはそれだけだから」

「でも私の願いが叶ったら春華を忘れちゃうんでしょ?」

「失敗しなければね」

春華がニカッて明るく笑った。
あどけない、少年の笑顔だった。

春華を忘れてしまうくらいなら願いなんて一生、何も叶わなくてもいい気もした。

私を必要としてくれたのは春華が初めてだったから。

家を貸してもらえて、寝る場所や食べる場所がある。
都合のいい存在なだけかもしれないけれど、春華との暮らしが少しずつ私の気持ちをやわらかくしていることも事実だった。