「ちょっと横になる?」

春華が私をベッドに座らせて、訊いた。
私は首を横に振って、言った。

「ちゃんと話そう」

「そうだよね」

「アレは、春華がやったの?」

春華は一瞬、天井を見上げる仕草をしてから、私の目を見て、困ったような笑い方をした。

「どう思う?」

「分かんないよ。あんなこと、現実に起こったってことすら信じられないのに。でも春華、あのお兄さんを誘導したよね?」

「誘導って?」

「お兄さんが、”サンタなんて消えちゃえ“って言うように仕向けたように見えたよ」

春華が私の隣に座った。
二人分の体重でマットレスが少し沈んだ。

「そうだね。うん、ヨヅキの言う通りだよ」

「なんでそんなことしたの」

「あのサンタクロースは幸せの象徴なんかじゃない」

「どういうこと?」

春華は考える素振りを見せてから、とても大切なことを語るみたいに、ゆっくりと、一つ一つの単語を丁寧に口にした。

「あのサンタの袋。イベントに来た人にプレゼント配るみたいだったでしょ」

「うん」

「あの袋の中身はそんな素敵な物なんかじゃなかった」

「…なんで?」

「ナイフとかノコギリとか、手作りかな?手榴弾みたいな物とか。人を傷つける為の物が詰まってた」

「何言ってんの?透視でもしたっていうの?」

春華の言ってることを「あぁ、そうですか」ってすんなり受け入れられるほど、私の頭は柔軟じゃない。

そんなイリュージョンみたいな話、一瞬じゃ理解できない。

だけど苦笑いを浮かべる私のことは全然気にしてなくて、春華は真面目な顔で頷いた。

「透視…そうだね。そんな感じかも」

「ほんとに何…言ってんの…」

「視えるんだ。“あの人なんかおかしいなぁ″って気配を感じたら、怪しそうな物、全部。さすがに人の心や頭の中までは視えないけどさ」

「…そういう体質なの?」

「体質っていうか、職業…家系?かな」

「家系」

「そう」

春華が言ったことをゆっくり頭の中で噛み砕いて考えた。

春華は”そういう“家系に生まれて、自然と人となりを察知して、持ち物の中身が視えたりする…?

「ごめん、よく分かんない」

考えることを諦めた私に、春華はニコッて笑った。

「そうだよね。ちゃんと説明するよ」

「うん」