「ねえ。春樹のセリフじゃないけど、菜乃花ちゃんも結婚を考えたりはしないの?」
「うーん…。私、周りの人達とちょっと感覚違うみたいなんですよね」
「ん?どういうこと?」
「女の人も、私くらいの年齢になったら誰かとおつき合いしたり結婚に憧れたりしますよね?でも私はそんな気持ちにならなくて。大学時代も、いつも春樹先輩に言われてたんです。せっかくのキャンパスライフをもっと楽しめって。取り敢えず誰かとつき合ってみたら?って」
「でも結局そんな気持ちにはならなかったのね?」
「はい。だから私は一般的な流れには乗れないのかなと思っています。周りがどんどん結婚していっても、私は出来そうにないなって」
「それは、結婚や恋愛に興味がないから?」
「それもありますけど、一番は自信がないからです。有希さんも、とってもお綺麗だしキラキラしたオーラがあって、私なんかとは違うなといつも思っています」

そんなこと…と首を振って視線を落とすと、有希は再び顔を上げた。

「ねえ、菜乃花ちゃん。『Be you tiful』って言葉知ってる?」
「ビー、ユー、ティフル、ですか?ビューティフルではなくて?」
「そう。『あなたらしくいることがbeautiful』なの。そのままの菜乃花ちゃんが、一番綺麗なのよ」
「そのままの、私…」
「そうよ。だから周りと比べたりしないで。菜乃花ちゃんは菜乃花ちゃんのままでいいのよ」

その時、ホワーと可愛い泣き声がして有希は立ち上がった。

「あら瑞樹。起きたのねー」

優しい声でベビーベッドに近づく。

(私は私のままで…)

ソファに残された菜乃花は、心の中で有希の言葉を噛みしめていた。