午前の競技が、着々と、滞りなく進んでいく。
放送席では、中立の立場の放送委員が常に冷静な立場から戦況の報告と声援を送っている。
「白頑張れ」
「紅組、速いです。白組も頑張れ」
「紅組、アンカーです。白組、最後まで走り切りましょう」
スコア版を見なくても、この放送を聞けば戦況は明らかだった。
かなりの得点差がついていた。
紅組は圧倒的な強さを見せつけ、応援席は大いに盛り上がっている。
応援団を筆頭にみんなが声を合わせ応援歌を熱唱し、競技中もなお団結力を高めている。
一方の白組は、すっかり士気が下がり、応援の声も小さい。
戦いをすでに投げ出した男子たちが、テントの外でだべりだす始末。
「ほら、みんな、声出して行こう。体育祭はまだまだ始まったばかりなんだから」
星君が応援席に向かって声をかけた。
その声に、みんなの視線が上を向く。
だべっていた男子たちも、渋い顔を作りながらも応援席に戻ってきて声を出し始める。
困ったときにいつも助けてくれるのは星君だった。
みんなに指示が伝わらない時も、応援団内で意見が割れた時も、紅組の不良グループと白組の不良グループの生徒たちが激突した時も、収めてまとめてくれたのは、いつも星君だった。
星君は、すごい。
星君の声掛けで、みんなが動く。
それなのに、私はどうだろう。
周りが全く見えていないわけではないのに、咄嗟に声が出ない。
ただオロオロとして、足がすくんで、震えて、何もできない。
__私も、星君みたいにできたらいいのに。
何度そう思っただろう。