開会式が終わると、第一種目の競技の準備に追われる委員会や、入場門に向かう生徒たちでグラウンドは一時ごった返した。
その中で、私たち応援団は応援席に他の生徒たちを誘導していく。
その途中、砂埃が舞う中で、その視線に気づいた。
目が合った人物に、はっとなった。
紅組団長、一ノ瀬拓海。
一ノ瀬君は、星君と並ぶ学校の人気者だ。
二人が紅組と白組に別れたという知らせに、学校中が大いに湧いた。
同時に、紅組団長は一ノ瀬君、白組団長は星君に決まったも同然だった。
星君同様、一ノ瀬君もまた、学校中の人気を集めている一人だった。
一ノ瀬君は、星君のように生徒会や学級代表に手を挙げるタイプではないけど、学校では目立つ存在だった。
運動神経は抜群で、体育ではどんな種目でも難なくこなす。
つるむのは学年でもやんちゃで目立つタイプの男子ばかりで、応援団もそのメンバーで構成されている。
もちろん女子からの人気も高く、よくモテる。
先生にも物怖じせず堂々と発言するし、いつも自信に満ち溢れている。
一ノ瀬君がその場にいるだけで、場が華やぐ。
賑やかな輪の中心にはいつも一ノ瀬君がいて、その場を仕切っている。
学校行事の花形には欠かせない存在。
ビジュアルもリーダーシップも文句なし。
その魅力に、みんないつの間にか引き付けられる。
誰もが認める絶対的リーダー。
そんな一ノ瀬君を、応援団長にしない理由がない。
そんな一ノ瀬君が、ものすごい剣幕で私の目の前に立ちはだかる。
思わず後ずさる。
目も泳ぐ。
広い運動場で、逃げ場は縦横無尽に用意されているのに、足がすくんで動けない。
普段はしない高い位置でのポニーテールだけが、団長のシンボルである長い鉢巻と共に風に揺れる。
私の脳裏に、対面式の映像が鮮明に流れた。
忘れもしない、敵大将と初めて相まみえた、あの日を。