紅組が持ち時間を超えたため、応援合戦の得点は白組が上回る結果となった。
「この分だと、午後からまだ巻き返せそうだね」
「う、うん」
星君の前向きな言葉に、私はぎこちなく返事をした。
胸の奥の方が、モヤモヤしていた。
追いつけそうなのに、巻き返せそうなのに、もしかしたら優勝も夢じゃないかもしれないのに。
どうしてこんなに、モヤモヤするんだろう。
「吉川さん」
その声と同時に、両肩に、優しい重みが乗っかった。
顔を上げると、すぐそこで、星君の優しいまなざしと出会った。
どきんと胸が鳴った。
生地の厚い学ランごしなのに、肩に置かれた手のひらから、優しさと温かさがじわじわと伝わってくる。
「気持ち、切り替えていこう」
「星君……」
「僕はいつも、吉川さんを応援してるよ。そばにいるから」
__「守ってあげたくなるんだよね」
__「かわいいんだよね」
先ほど星君に言われた言葉が耳元によみがえって来る。
その言葉を思い出しただけで、胸をときめかせずにはいられなかった。
だけど、離れなかった。
私の頭から。
あの姿が。あの声が。
声を張り上げながら旗を大きく振るあの勇姿が、目に焼き付いて、頭に焼き付いて、胸に焼き付いて、離れない。
「星君」
「ん?」
「ごめん、私、違うの」
「え?」
「守ってほしいんじゃ、ないの」
「吉川さん?」
「私は、戦いたいの。だってその方が……」
保健室でそうしたように、私はぐっと手に力をこめて拳を作った。
「その方が、かっこいいから」