紅組のすべての演技が終わり、紅組の応援団たちが審査員席を向いて整列する。
 あとは最後の挨拶だ。
 スターターを持った先生が発砲準備を始めている。
 時間もぴったり。
 そこまで確かめて、私は膝小僧に顔を埋めた。

__完敗だ。
 
 私じゃ、やっぱりダメなんだ。団長なんて。
 女子の団長じゃ、あんなかっこいいアイデアも思いつかないし、迫力のある演技もできない。
 応援団を引っ張っていく力もない。
 何勘違いしてたんだろう。
 どうして団長なんてできると思ったんだろう。
 カッコよくなりたいなんて。

 一ノ瀬君の言う通りだ。こんな私じゃ……



「白組の 健闘を祈ってーーーー……」



 その声に、はっとなって顔を上げた。
 すると、鮮烈な赤色の布が、目の前ではためいていた。
 それが、勇ましく翻る。


「フレー フレー しーろーぐーみ……」


 旗の向こう側に見えたのは、高い空に向かって声を張り上げる、一ノ瀬君の姿だった。
 声を張り上げながら、全身を使って旗を振る。

「フレッ フレッ 白組 フレッ フレッ白組 オーーーー」

 その声は、たった一人の声なのに、大勢で言う応援の声よりもずっと、胸を震わせるほどのものすごい威力があった。
 

パンッ!


 その音に、体がびくりと飛び上がって我に返った。

 移した視線の先に、スターターから出る煙が、秋の空にたなびいて消えていくのが見えた。


__……へ?

 
 グラウンドの中央に視線を戻すと、一ノ瀬君は何事もなかったかのように、審査員席の前に走って戻った。
 そして体を反らすと、再び声を張り上げた。


「これで 紅組の 応援を 終わります ありがとうございました」