だれにも気づかれない黒子(くろご)のような存在だけど、羽賀先輩はそんなわたしを忘れることなく気遣ってくれる。

やっぱり羽賀先輩ってやさしいな。


それにしても、羽賀先輩が言っていた『いい考え』ってなんなんだろう。


休憩が終わり、試合再開。

あっくんと羽賀先輩の活躍で練習試合は圧勝した。


あっくんの姿は間近で見れたし、校内清掃には貢献できたしでわたしは満足していた。

あとは、だれにも気づかれずに帰るだけ。


――そう思っていたら。


「藍原!」


後ろから名前を呼ばれる。

わたしを呼び止めたのは羽賀先輩。


「試合お疲れさまでした」

「ありがとう、藍原もお疲れ。今から帰るところ?」

「そうですけど…。サッカー部、もうミーティング終わったんですか…?」

「うん。ミーティングは後日することになったから、今日はもう解散」