ところが、水はすぐに止まった。
なにが起きたの?と思って目を開けると、革ぐつが見えて、視線を上に移動させる。
ひとりの執事が十和田さんの手首をつかみ、制止しているのが視界に映った。
「そのへんにしとけよ」
そこにいたのは、執事科一年の鷹見悠琳くんだった。
ぞくりと身ぶるいがするような声で言って、十和田さんの手からコップを奪い取ると、テーブルに置いた。
あ然とする十和田さん。
しかし、すぐにはっとして。
「な、なにをするのよ! 執事が主人に向かって、ただですむと思ってんの?」
「あんたの執事になった覚えはねえよ」
「なっ!」
「そもそも、茶会は交流会。あんたに媚びへつらう場じゃないんだよ」
鷹見くんは立てひざをついてしゃがむと、ビリビリにやぶれた手紙を拾い集めた。
「行くぞ」
手紙をポケットに入れて、わたしの手を取って歩き出す。
ざわざわとする会場をあとにした。