どうして……。

これは、入学して初めてお父さんから届いた手紙。

どんなひどい仕打ちを受けても、この手紙があったからがんばれた。


【仕事で失敗しちゃって、毎日頭を下げる日々を送ってるけど、璃衣ががんばってるって思うとお父さんもがんばれる】


わたしも、お父さんががんばってるって思っていたから、がんばれたんだ。


お父さんの手はいつも汚れていた。

その汚れが手紙にもついていた。

手紙がお父さんそのものみたいに感じて、お守りにしていたんだ。


なのに、どうして……。


この手紙があったから耐えられた。

お父さんがいるから耐えられた。


だけど……もう、やめたい……っ。




「きゃっ」


突然、頭に冷たいものがかかった。


「邪魔だから、さっさと消えてくれなーい?」


十和田さんがそう言いながら、コップの水をちょろちょろとわたしの頭にかける。


冷たいっ。

でも、逃げられない。

手紙を拾い集めるまでは、逃げられない。

ぎゅっと目をつむって、コップの水がなくなるのを待つ。