「なんでしょうか」

「ナプキンを落としちゃったの。交換してきてくれる」


十和田さんの足もとには、汚れないようにひざにかける布のナプキンが落ちていた。

こういうとき、普通は執事科に頼むのがマナーなのに、どうしてわたしに……。

決まってる。こき使いたいだけだ。


かがんで拾う。


「なにこれ……ぷっ、手紙? 今どき?」


十和田さんの声がする。

なにを言っているのかと思って、かがんだまま見上げると、十和田さんが便せんから手紙を取り出そうとしているところだった。


その手紙!

ポケットをまさぐると、いつも入っているはずのお父さんからの手紙が入っていなかった。

かがんだときに落としちゃったんだ!


取り返そうと手を伸ばしたとき。

ビリビリ──。


「くっだらなーい」


無情にも目の前でやぶかれてしまった。

何度も縦に裂かれて、こまかくなった手紙がひらひらと舞うように落ちてくる。


「片づけよろしくー」


十和田さんは、悪びれたようすを見せることなくそう言った。