『お父さんのためにM学に入ったのは知ってるけど、いやになったら逃げ出していいし、やりたいことができたらいつでも道を変えていい』


どうしてそんなことを言うの?

逃げ出したいときは何回もあったけど、お父さんのためにがんばったんだよ。

やりたいことなんてない。

わたしはここでしか、お父さんのためにならない。


『好きな人ができたら、自分が幸せになることを考えていいんだからね』


好きな人なんて作らないよ。

自分より、お父さんの幸せのほうがずっと大事だもん。


『お父さんの願いはただひとつ。璃衣が笑って、幸せに生きててくれたらそれでいい』


わたしだって願いはひとつ。

お父さんがわたしのために大変な思いをしないですむよう、幸せに生きてほしい。


ぜんぶ、お父さんがわたしの生きる糧なんだ。



……だけど。


わたし、そんなお父さんと同じくらい、大切にしたい人ができてしまった。