『璃衣のすごさに悠琳くんも気づいたんだよ。もしかしたら、悠琳くんは璃衣のことが好きなんじゃないのかな?』
「えっ!」
お父さん、なんてことを言い出すの! そんなわけないよ。
悠琳くんは困ってる人をほうっておけなくて、だから、わたしを助けてくれた。
そんな、だれにでも手を差し伸べられる人だから、わたしに話しかけてくれるのに深い意味なんかないんだ。
「違うよ。悠琳くんはだれにでもやさしいの。あのタカミ社長の息子だもん」
『そっかあ。じゃあ、璃衣は? 璃衣は悠琳くんのことをどう思ってるの?』
どうって聞かれても。
「わたしは……」
働きづめのお父さんをすこしでも楽させたくて、M学のメイド科に入学した。
入学してからは、成績を落とさないよう必死に勉強する日々。
だけど、十和田さんに目をつけられて、いつ学校をやめさせられてもおかしくない日々を送るようになった。
危険ととなり合わせ、って言ったらおおげさかもしれないけど、眠れなくて不安な毎日だった。