盗撮は本人から許可をもらって難を逃れたけれど、もしまたお願いされて
『次は鷹見くんを撮ってきて』
なんて言われたら、今度こそ犯罪に手を染めないといけなくなるかもしれない。
きっと鷹見くんは、お願いしても写ってくれないだろうから……。
ビクビクしながら毎日を過ごして、十和田さんのいじめに耐えた。
せっかく入った学校を途中でやめるなんて、お父さんに迷惑がかかる。心配させてしまう。
大丈夫。耐える。
きっとそのうち飽きて、どうでもよくなってくるよ。
お父さんには心配かけない。
◇
あれから一か月。二度目のお茶会の日がやってきた。
お茶会は、執事科がもてなす席に、S学のお嬢さまやお坊ちゃまたちが着いて、紅茶やスイーツをたしなみながらお話をする会だ。
メイド科の生徒は、壁に並んでそのようすをただ見ているだけ。
しかし、十和田さんが「来なさい」と手でジェスチャーしている。
「璃衣、大丈夫?」
同じメイド科の近江奏音ちゃんが心配して声をかけてくれる。
わたしはせいいっぱいの笑顔を作って、「大丈夫だよ」と答えた。