「あっ……」
数人の女友だちと話しながら、十和田さんがやってきた。
目が合って、あからさまに不快そうな顔をする十和田さん。
不快なら、そのまま無視して行ってくれればいいのに……。
「メイド科の生徒が、気軽に足を踏み入れないでもらいたいわね」
いつもの表情に戻して、いやみを言ってきた。
それが悪口開始の合図。
十和田さんにおくれを取るまいと、友だちたちも口々にののしってきた。
「そうそう。庶民も入れるなんて知れたら、S学の価値が落ちちゃうわ」
「メイド科って、なんのために存在してるんでしょうね」
「お茶会も立ってるだけで目ざわりだし」
「M学は執事科だけにしちゃえばいいのよ」
「執事科のストーカーでしょ、メイド科って」
「…………」
わたしたちはなにも言い返せなかった。
反論したいけど、反論したら目をつけられて、なにをされるかわからない。
だから、たてつけないんだ。
奏音ちゃんがぼそり
「どっちがストーカーだよ」
と言ったけど、彼女たちの耳には届かなかった。