真っ直ぐ見下され、響の目線から逃れられない。


ドクンドクンと心臓が鳴って、落ち着かない。


「…もし、他に好きなやついないんなら、俺と付き合ってくれませんか?」


「わ…」


紬が耳まで真っ赤にしている様子を、響が不安気に見つめる。


「私の100円玉!」


「…?」


「私の100円玉、まだ入ってない!!」


「は?」


「水瀬君だけ、ズルい!!私も入れたい!」


「ちょ…ヒトが真面目に告ってるってのに──」


「絶対入れたいの!」


池に背を向けて立ち、響を見上げると、紬は頬を赤く染めて、言った。


「100円玉…絶対入れて、彼氏作る!…そしたら、水瀬君が彼氏になってくれるんでしょ?」


響を見つめる紬の目線が、自然と上目遣いになる。
響は、紬の言葉に顔を赤く染め「そりゃ…もちろん。」と返した。


「私も水瀬君みたいに、100円玉入れてから願いを叶えたいもん!」


そう言って、100円玉を放り投げようとした紬の手を、響が掴んだ。


「コラ。そんな角度じゃ、また入らないだろ?俺が絶対入るように教えてやるよ。」


響はそう言って紬の後ろに回ると、紬の背中側から腕を伸ばしてきた。


背中に響の硬い体を感じ、ドキドキが止まらない。

響の鼓動も、少しだけ早い気がする。


最後に100円玉が白鳥の両翼に収まるまで、
響の腕の中で紬はずっと、顔を赤く染めていた。



fin.