そんな2人のやり取りを、傍で聞いていた真白は、痺れを切らしたように「あたし、もう帰る。」と言って回れ右をし、帰り路につこうとした。


そんな真白のブレザーの裾をガシッと掴んで、紬が懇願する。


「お願い、ましろん!!最後の一投付き合って!!」


「は!?さっきのが最後の一投だったでしょ?」


「さっきのは水瀬君に当たったからノーカンで!」


「勝手にノーカンにすなー!」


「だってぇ!」


「だってぇ、じゃない!もう今日は諦めなって!…あ。」


その時ちょうど、真白のスマホがブブッと震えた。


「ダーリンからだ♡今から会えるー?だって。もちろん会えます!!」


「なっ…!私という友と一緒にいながら、彼氏に会いに行くなんて…!」


「もう十分付き合ったでしょ!じゃ、また明日ねん♪」


真白はサッと紬から離れると、足早に去っていった。


残された紬と響の間に、沈黙が流れる。


「いいなぁ、ましろん…。彼氏とデートかぁ…。」

高校に入学してから、周りの友達はみんな彼氏ができている。

彼氏がいないのは…紬だけ。