冬のある日の下校時間。
神社脇にある池のそばに、ブレザーを着た女子高生2人が立っていた。
一人は奈木野紬、高校1年生。
もう一人は紬の友人、同級生の原真白だ。
「ましろーん!次こそ見ててね!」
池から少し離れたところにある白鳥像のそばに立ち、手を振ってきた紬に、真白は「はいはーい」と軽く返事をした。
「いっくよー?それーー!」
後ろ向きで100円玉を放った紬。
小銭が池の真ん中にいる白鳥像の両翼まで届けば、願いが叶うと言われているが…
ちゃりーん
100円玉は池に届くどころか、池の手前の地面に音を立てて落ちた。
「くぅぅーー!また失敗!!」
紬は地団駄を踏んだ後、地面に落ちている100円玉の方へズンズンと歩み寄り、拾い上げた。
「なんっっで届かないかなぁ!?ねぇ、ましろん!?」
紬が真白の方へぐりんと顔を向けて問いかけると、ふぅ、と溜息をついた真白は呆れ顔で言葉を返した。
「つむー、もう諦めたら?たぶん…そういうコトなんだよ。」
「そういうコトとは!?」
「だからぁ…今のところ彼氏ができる可能性はありません、ってコトでしょ?」
「なっ……!そんなハッキリ言わんでも…(泣)」
「だって、もう30分近く格闘してるじゃん!いくら神頼みしようって言ったって、こんなに失敗し続けるんなら、神様もきっと『今日はもう帰んなさい』って思ってるって!」
「そんなぁ…。」