そう言って中村がドアを閉めると、真夏はキャッキャっとはしゃぎながら、薄ピンク色の炭酸ジュースを手に取った。

 「朝からこんな贅沢できるなんて!お姫様になった気分!友達に自慢しちゃおーっと」

「ちょっと!くれぐれもMINATOの家にいるなんてこと言っちゃダメだからね!私がMINATOと知り合いだってことも言っちゃダメ!」

「はいはい、わかったわかった」

 適当な相槌を打って、ぷはぁーと一気にジュース飲み干す真夏を見て、本当に自分たちが重要な秘密を抱えていることをわかっているか、心配になる。

 自分がよく知らないだけで、MINATOは有名ブランドの広告塔になるほど有名な俳優なのだ。三人だけで話していると、その事実が頭からすっぽり抜け落ちてしまいそうになるが、紫遥が今、湊のそばにいるのも、元はと言えば有名人である湊と自分の写真が撮られてしまったからだ。

 毎日のように記者に追われ、最低限のプライバシーは守られているとしても、どこでカメラを向けられているかわからない。それなのに、自分たちが少しでも誰かにこの秘密を打ち明けてしまったりしたら、それこそ家政婦になるだけじゃ済まないかもしれない。
 
 学校に到着してからも、不安な気持ちは収まらず、意気揚々と車を降りる真夏に向かって、絶対に誰にも話すなと念押しし、見送った。