「そういえば、部屋に飾ってあった絵、どれも素敵だね。ご両親のコレクション?」

「いや、両親は別に絵とか興味ないんで」

「じゃあ、ご兄弟のものとか?」

「俺のです。俺が好きで買いました」

 

えっ、と思わず声が出た。

 湊が自ら絵を買うだなんてこと、想像もしていなかった。高校時代の彼は、絵はおろか、芸術にまったく興味がなかったし、紫遥が丁寧にあれこれ説明しても、特に興味を示さなかったのだ。それなのに。


「そ、そっか。なんか久我くんが絵を買うなんて不思議な感じ。ほら、高校時代は絵になんて興味ないって言ってたから……」

 そう言いながら、また手元の皿に視線を移した瞬間、湊が紫遥の手を掴んだ。