手際よくゴミをまとめ、汚れた食器類を広いキッチンに運ぶ。ほとんど料理をしないのか、シンクはピカピカで、食器用洗剤などは置いておらず、代わりに備え付けの食洗機を使用しているようだった。

(とりあえず軽く水洗いして、ここに入れていけばいいのよね)
 
 食洗機の扉を開き、食器を中に置いていると、2階から降りてきた湊が、急いで紫遥のところに駆け寄る。

「そんなのいいですよ。今日色々あって疲れてるんですし、お客さんなんですから、休んでください」

「私のこと家政婦として雇った人が何言ってるの。それに、動いてた方が気がまぎれるから」

「……じゃあ、俺も手伝います」


 2人きりで黙々と作業を進めていると、どうしてもあの夜の記憶が蘇り、紫遥は自分の鼓動が早まるのを感じた。

 隣に湊がいるだけで、こんな風になるなんてどうかしている。

 気を紛らわせるように、紫遥は話を切り出した。