最初は初々しい新入生だったのに、会う回数が増えるにつれ、生意気になり、紫遥をからかうこともしばしばあった。
いまだにそれは変わらないようだ。

「中学生だったら、老舗より、最近流行りのブランドがいいかもな……デザイン重視で、傷めばまた買い換えればいいんだし……」

 そう言ってブツブツ言いながら考え込んでいる湊は、心なしか今の状況を楽しんでいるようだ。
 
もしかして子供が好きなんだろうか。子供、といっても真夏は中学生になり、中身もだいぶ大人びてはいるが、湊にとっては妹ができるという感覚なのかもしれない。

 相手の仕事部屋に居候する形とはいえ、住み込みを指定してきたのは湊の方だ。お言葉に甘えて、せめて真夏が心地よく住める環境は整えさせてもらおう。

なにせ、今住んでいるアパートには勉強机などなく、真夏はいつも畳の上であぐらをかき、ご飯を食べるちゃぶ台で宿題をしているのだから。