「それなら心配しないでください。家政婦と言っても、先輩にやって欲しいことは部屋の掃除くらいです。俺は部屋にいないことが多いので、食事は作る必要ありません。もちろん仕事は続けてもらっていいですし、妹さんも一緒に住めば問題ないです」

 「一緒に住めば、って……久我くんのお家に?」

 あのタワーマンションの一室に湊と自分、そして妹が暮らすなど到底無理な話だ。

たしかに部屋は一人暮らしにしては広く、たしか2LDKほどの広さだったが、それでも三人が同居するには、あまりにも互いのプライベートが見えすぎる。
 
 そもそも、つい先日関係を持ってしまったばかりの男女が同じ屋根の下で暮らすなんて、信じられない。彼は平気なのだろうか、と伺うように湊を見ると、湊は顔色ひとつ変えずこう言った。

 「月給60万払うつもりです。1年もあれば、先輩の借金も返せるんじゃないですか?」

 紫遥はぎょっとして、湊を見た。

 この男は一体、どこまで自分のことを知っているんだろうか。