紫遥は責められたわけでもないのに恐縮し、肩をすくめた。

 「すみません、普段テレビを見ないので、そういう情報に疎くて」

 久我家について知らないことが、そんなにもおかしなことなのだろうか。そういえば、湊にも、つい先日そんな視線を向けられた気がする。

 「そうでしたか……では、軽く説明しますと、久我家の三人兄弟の末っ子がMINATOで、他二人は芸能の仕事をしている訳ではないのですが、時折メディアにとりあげられるんです。もちろんMINATOの兄ということで話題に取り上げられるというものもあるのですが、そうでなくても容姿が一般人離れしているものですから……」

 一般人離れしている、つまり湊のように顔が整っているということだろうか。

「それで、その三兄弟が仲が悪いというのは有名な話でして、と言ってもMINATOが一方的に毛嫌いしているだけなのですが。とにかくMINATOが兄の会社の広告塔になるなんてこと、今までは考えられなかったんですよ」

 はあ、と気の抜けた声が出た。とある一家の兄弟の仲がそこまで世間で注目を浴びることなどあるのだろうか。

「とりあえずそんな記事が出れば、あとから一般人の女性がMINATOの家に一泊していた、なんて記事が出ても、世間はなんとも思わないわけです。もはや、Bistiaの宣伝にすらなり得ます」

「なんとなくご事情はわかりました。ただ、住み込みで専属家政婦というのは、現実的に厳しいです。私は妹と暮らしてますし、平日は派遣社員として働いているので……」

 すると、隣で黙っていた湊が口を開いた。