ああ、これ以上考えたら、変に昨晩の記憶が美化されてしまう。もう忘れてしまおう。
 
そうして湊は、Bistiaのサイトを閉じ、もう一生会うことはないであろう紫遥との記憶に、そっと蓋を閉じた。

 しかし、風呂に入り、ベッドに入ったあとも、紫遥のことが頭から離れず、考えないようにすればするほど、紫遥の笑顔が頭から離れなかった。
 

そして、翌日の撮影に、一睡も眠らず参加した湊の目の下には、見事なまでの濃いクマができ、メイクアーティストたちが頭を抱えることとなったのだ。