いや、やはり彼女が処女だったなんて考えられない。この血痕は、朝になって鼻血が出たとか、紙で指を切っただとか、そういうことで偶然ついたものに違いない。

 そうやって半ば自分を無理やり納得させた湊は、シーツを剥がしながら、また紫遥のことを思い出した。

 久しぶりに抱きしめた身体は細くて、あのまま力強く抱きしめていたら、音を立てて壊れてしまいそうなほどだった。

 ちゃんと食事はとっているんだろうか。家政婦の仕事は、時給は高いが案件数は限られているという。まさか食べるのに困るほど、生活が苦しいのか?
 
 湊は紫遥のシフトを確認しようと、Bistiaのサイトを開き、スタッフ一覧を見る前に手を止めた。
 
 (何をやっているんだ、俺は)
 
 湊は、彼女のことで頭がいっぱいになっている自分自身に呆れ、フッと笑った。

 彼女と関係をもったのは、自分の演技のため、あるいは学生時代の後悔をなくすためだ。