「私は大好きな人と家族になりたいから結婚するんです。確かに結婚しなくても一緒にいることはできますし、交際してから短期間での入籍となりますが、私は長い間彼と友達でも恋人でもなく、家族になりたかったんです。こういう回答では、週刊誌が売れないから不満足ですか?好きな人と結婚したいから結婚する。そんな当たり前の答えでは、つまらないですか?」

 怒ったように記者に詰め寄る紫遥と、そんな紫遥の勢いに面食らう記者。そして、その傍らで紫遥のストレートな言葉に一人照れている湊が、紫遥の言葉を引き出した記者に感謝をしていた。
 
「湊くん……?」

 紫遥が隣で顔を手で覆い、俯く湊を不思議そうに見つめた。

「いや、なんでもないです」

 湊は気を取り直すように咳払いをして、記者の肩にポンと手を置いた。

「劇的な理由がなくてすみません。けど、他の情報なら提供できるので、それで勘弁してもらえませんか」

「他の情報?」

「ええ、僕たちの初めてから、包み隠さずお話ししますよ」

「湊くん!?」

 イタズラっぽく笑う湊の腕を、焦った紫遥が必死に掴んだ。
 
 
 
 後日、記事には「MINATO結婚!奥さんとの馴れ初めとは」という平和な見出しがついた。
 高校時代の思い出、そして大人になってからの再会。ある意味刺激的で夢のような二人のラブストーリーはMINATOファンのみならず、多くの人の話題の中心となった。
 そして、湊は「みんなの王子様」から「理想の夫」としての地位を手に入れ、出演するドラマや番組の幅も広がった。

 結婚して、さらに湊の勢いが増すとは思っていなかった町田は、「結婚したら仕事減るって言ってたやつ誰だっけ?」と湊に揶揄われ、しばらくの間ふてくされていた。