「我慢なんてしてないよ。今すごく安心してる。紫遥ちゃんと湊さんの養子になれてよかったって。今までさ、紫遥ちゃんに早く彼氏作りなよとか冗談で言ってたけど、もし彼氏が出来て結婚して子供が出来て……そしたら私はどうなっちゃうんだろうって、不安だったんだよね。だから、湊さんとのこと応援したい気持ちと、湊さんとうまくいったら私は一人になっちゃうのかなって不安な気持ちがずーっと喧嘩してた」

「一人になんてするわけないでしょ!」

「わかってるよ。けど、覚えてる?私がまだ小さい時、紫遥ちゃん言ったじゃん。私はあなたのお姉ちゃんじゃないって。お姉ちゃん、って呼ばないでって」

「それは……」

 確かにそう言った覚えがある。あの時は精神的にも幼くて、突然妹が出来たことにも、自分が色々なものを犠牲にして母親代わりにならなければいけないことも中々受け入れられなかった。
 だから、「お姉ちゃん」と呼ぶ真夏を拒絶したのだ。

「あの時は、どうしてこの人はこんなにも辛そうなんだろう、どうして私に怒ってるんだろうって不思議だったけど、今考えれば紫遥ちゃんにとって私なんて邪魔でしかなかったよね。もし私がいなかったらもっと自由に恋愛できてたのかなとか、もっと生活楽だったのかなって思うから。……今までごめんね」

 紫遥は今にも泣きそうになっている真夏を力強く抱きしめた。

「何言ってんの。真夏がいなかったら、私とっくの間にダメになってたよ。だから、謝らないで。今まで一緒にいてくれてありがとう」

「紫遥ちゃん、苦しいよ」

 そう不満気に言う真夏の声は、わずかに震えていた。