「……本当よ。信じられなければ、連絡をとってみるといいわ」

「母は怪しいところからお金を借りていました。おそらく相手はヤクザか、それに近しい人達だと思います。久我家の方がそんな人たちと関わったと知られたら……」

「もちろん会社のお金を使っているわけではないし、取引は外に漏れないように手を回してあるわよ。……あなたにそんなことを心配されるなんて心外ね」

 聡子は不愉快そうにふんと鼻を鳴らした。

「すみません、ただ湊くんのお母様がそこまですることに驚いちゃって……危険なことだと思いますし」

「……あなた、何が言いたいの?」

 紫遥の言葉の真意が読めず、聡子は苛立った声を出した。
 すると、紫遥がまっすぐ聡子を見つめて言った。

「私はただ……こんなに自分を大事に思ってくれるお母様がいる、湊くんが羨ましくて」

 次は聡子が驚く番だった。
 目の前で、しゃんと姿勢を正し座っている紫遥の顔は柔らかく、本心からそう言っているようだった。
 
 この子は今までの話を聞いていたんだろうか。
 話が通じていないのかと不安になって、もう一度念を押す。

「あのね、私はあなたがうちの息子と釣り合わないから別れろと言っているのよ?」

「はい、わかっています。すべて事実ですから、それに関して何も言うことはありません。私に学歴がないのも、お金がないのも、母親がいないのも、湊くんに釣り合っていないのもすべて、お母様のおっしゃる通りですので」

「……」