「大丈夫。防寒対策バッチリだから」
そう言って紫遥は身体中に貼り付けているカイロを見せた。
湊は子供のようにあどけなく笑い、「実は俺もです」と中に来ていたニットをめくり、カイロを貼った腰を見せた。
自分とは別世界に住んでいると思っていた湊が、自分と同じようなことをしていることがおかしくて、笑ってしまう。高校時代に戻ったみたいだった。
「たくさんカイロも貼ってることだし、もう少し時間大丈夫ですね」
「まだ何か乗るの?」
立ち上がった湊にそう尋ねると、湊は手を差し出してにっこりと笑った。
「着いてきてください」
湊の手を取り、後をついていくと、遊園地の中央にある噴水広場に着いた。
アトラクションから少し離れたこの広場は見晴らしがよく、ライトアップされた園内がよく見えた。
すると、突然すべての光が消え、紫遥を暗闇が包んだ。
「え!?何?」
驚いて湊の腕をぎゅっと掴んだ瞬間、後ろから口笛のような音が鳴った。
パッと後ろを振り返ると、真っ暗な夜空を覆い尽くすように大きな菊型の花火が上がった。
火花が一滴一滴息を飲むほどキラキラと輝き、一瞬で空に溶け込んだかと思うと、また近くで違う色の花火が咲く。
「綺麗……」