「ごめんね。私、SNSもやってないから、芸能系まったくわかんなくて」

「それは別にいいんですけど……いや、でも、そうか……」
 
 湊は紫遥に会う前、紫遥が芸能人になった自分との思い出を変に美化しているんじゃないかとか、自分との行為を武勇伝として周りに言いふらしているんじゃないかとか、色々考えて、どうやったらそんな女を打ちのめせるかを考えていたが、全ては杞憂だったらしい。

 紫遥は湊が今、何者であるかもよく知らないのだ。

 紫遥は湊が何か言う前に、先手を打つように口を開いた。
 
「あの時は突然いなくなってごめんなさい。けど、久我くんはもう、私の顔なんて見たくないかなって思って……」
 
 紫遥の苦しい言い訳に、湊は冷静に答えた。
 
「わかってますよ。あの時、俺のことをからかってたことくらい」