「俺は撮影終わってから参加して、三十分以内にお持ち帰りコース。余裕だろ?」

 得意そうに笑う修弥を見て、バカだなと呆れてしまうが、ついこの間まで自分もそちら側にいたのだ。修弥と飲み会を開いては可愛い女の子を家に持ち帰り、一夜限りの関係を持つ。そのままセフレになったり、付き合ったこともあったが、どれも長続きしなかった。そもそも好きだったのかも怪しい。だが、紫遥と再会してからはそんな女遊びに何の価値も見出せなくなった。
 
 今人気絶頂のアイドルを抱いたって、誰もが羨む清楚系女優を落とせたって、好きな相手でなければ虚しいだけだ。それに、下手に好意を持たれて付き纏われるのも面倒臭い。
 修弥にもそれを気付かせてやりたかったが、目の前のチャラ男には、何を言っても笑ってあしらわれるだけな気がした。

「で、来るよな?前、湊が可愛いって言ってた子も呼んでおいたし!惜しいけど、今回はお前に譲るよ」
 
「いや、行かない」

「え?何?予定あんの?」

「そうじゃなくて、俺、そういう飲み会はもう行かない」

「へ?」

「お前一人で楽しんでこいよ」

「ちょ、ちょっと待てよ。お前まさか……」

「大事な子ができたから」

 ポカンと立ち尽くす修弥があれこれ詮索を始める前に「じゃあ衣装合わせ行ってくるから」と、湊はその場をあとにした。
 
「あいつ、マジ……?あの湊が……?」
 
 修弥は湊の後ろ姿を見送った後ハッとして、この衝撃的な事実を誰かに伝えなければと携帯を取り出した。