そして、山口の行動はどんどんエスカレートし、山口に裸を見せることも、大事な部分に触れられることも、嫌ではあったが、美大の受験を控えていた紫遥にとっては、推薦の権限を持つ山口に逆らえず、いつの間にか受け入れることが当たり前になっていた。
 それに、受け入れていれば、山口は常に優しく、孤独な紫遥を包み込んでくれたのだ。

「けど、お母さんが真夏を置いていなくなった時、すごく不安で気が狂いそうになって、自分の中で限界がきちゃったの。突然できた妹と二人だけで生活することにも、その責任をすべて自分だけに押し付けられたことにも、そして自分に真夏を一人で育てていくだけの力がないことにも絶望して、もう立ち上がれないと思った。けど……」

 紫遥は湊の胸に顔をうずめ、そして深呼吸してから話を続けた。
 
「お母さんが真夏を置いて、完全に家から出ていったことを知った先生は、真夏に会わせてくれって」

「真夏ちゃんに……?」

「先生は、真夏の父親なの」

 想像もしていなかった事実に、思わず「え?」と声が出た。
 真夏の父親ということは、紫遥の母親と関係があったということだ。しかし、山口は既婚者であるし、その頃子供も産まれていたはずだった。

「お母さんと先生がどこで繋がってたのかは知らないけど、二人は不倫関係だったらしいの。私も最初は信じられなかった。けど、先生から見せられた写真には、産まれたばかりの真夏とお母さんが映ってて」