「連絡の取れない香織さんはともかく、少なくとも真夏ちゃんの父親である俺は生きてるし、久我のおかげで再会することができたんだ。真夏ちゃんも、心なしか俺と話してる時、すごくリラックスしてたし。最後に会ったのはやっと喋れるようになったくらいの時だったけど、やっぱりどっかで覚えてんのかなー」

「……真夏には、産みの父親は死んだと伝えてありますし、この先もあなたが父親であることを話すつもりはありません」

「おいおい、そんな水くさいこと言うなよ〜困ったことがあったら、いつでも頼ってくれ」

 山口がそう言って、紫遥の肩にポンと手を置くと、紫遥は反射的にその手を振り払った。

「触らないでください!」

「仮屋、どうし……」

「私が高校中退した一番の理由は、真夏を一人で育てなくちゃいけなかったからじゃないですよ。先生ともう会いたくなかったからです。放課後、毎日先生に呼び出されて、気持ち悪い、性的なことをされるのが嫌だったし、こんな先生に頼るくらいなら、自分で真夏を育てるって決めて……だから、辞めたんです」

「性的なことってお前な……。お前のことを実の娘みたいに大事に思ってたからしたことで……」

「父親は娘にあんなことしない!」

 紫遥が声を荒げると、山口は一瞬驚いたように目を見開き、口を閉ざしたが、呆れたようにため息をついて

「父親と一緒に過ごしたことのないお前が、なんでそんなことわかるんだよ」

「……っ」

 紫遥は痛いところを突かれて、押し黙った。すると、山口は宥めるように言った。