お互い初めての行為で何が正しいのかわからない。しかし、求めるまま湊は紫遥の奥深くへと沈み込むように抱きしめ、キスをした。

 しかし、いざその行為をするとなると、途端に不安になった。

目の前の紫遥は、自分のキスには応じてくれるし、顔を熱らせ、こちらを見つめてはいたが、その目は終始冷静だった。少なくとも、自分に特別な好意があるとは思えない。
 
「どうしたの?」
 
 突然、動きを止め、自分をじっと見つめる湊に、紫遥は不思議そうに尋ねた。
 
「先輩は俺のこと好きですか?」
 
 そう口に出してから、女々しい質問だったと後悔した。ここまで来て、相手の気持ちを確認しないといけないなんて。
 自信のない男に見えたかもしれない。

「やっぱり答えなくていいです」と訂正しようとしたが、先に口を開いたのは紫遥だった。
 
「わからない」

 紫遥は小さく、そしてあっさりと、湊への思いが自分の中にないことを打ち明けた。

「……え?」

湊は絶句し、ただただ呆然と紫遥を見つめるしかできなかった。