横暴で自分勝手で自信過剰。友人としては面白いいい奴ばかりだが、自分が女性であるならば、絶対に近づきたくない男。それが湊の友人たちだった。

「あっ、湊さんのお兄さんとかいいかも。この前紫遥ちゃんが会ったって言ってましたよ!湊さんにそっくりで、優しそうだったって」

「あいつだけは絶対ダメだ!」

「へ?」

 湊は真夏の肩をガシッと掴み、語気を強めて言った。
 
「俺が絶対にいい男を見つけてくるから、兄さんにだけは近づくなって、先輩に言っておいて」

 真夏はきょとんとしながらも、頷いた。

 もちろん湊は、紫遥のためにいい男を探すつもりなんて毛頭なかったが、真夏がむやみに男を勧めないために、とりあえず見つけておくと言っておいたのだ。

 紫遥を他の男に取られるわけにはいかない。そう思って真夏に嘘までつく自分が、紫遥に特別な想いを持っていることに、湊はようやく気付き始めていた。

 


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翌日、日曜日の朝。紫遥が目を覚ますと、隣には真夏が背中を向けてスヤスヤと眠っていた。
 昨日はシャワーも浴びずに、倒れ込むように眠ってしまった。かろうじて服はパジャマに着替えていたが、それでもなんだか肌がベタつくようで、気持ちが悪い。
 
 シャワーを浴びようとベッドから立ち上がると、テーブルの上でチカチカ光るスマホが目に入った。
 手に取り画面を見ると、香奈子からの着信とメッセージが何件もきていた。

 昨日、自分が途中で合コンを抜け出してしまったことを思い出し、慌ててメッセージを順に開く。

『なんで帰ったの?ヒロシ、ショック受けてたよ。仮屋さんのことタイプだったらしい』