もしかしてスランプに陥ったとか、大きな問題を起こしたとか、犯罪に巻き込まれたとか、そういった類の話だろうか、と町田は身構えるが、すぐにそんな話ではないことに気付く。
 最近の湊の「大事なこと」と言えば決まっている。仮屋紫遥のことだ。

「本当にそれは、この時間にしなきゃいけない相談なんですか?」
「ああ。明日の朝までになんとかしたいんだ」

 明日の朝?もう深夜の二時だぞ?何を相談されても、明日の朝までに間に合わせるのは難しいのではないか。そう思い、町田は遠回しに断ろうとするが、湊は町田の反応を待つことなく、話を続けた。

 

 湊から詳しい事情を聞いた町田は、深いため息をついた。湊がやろうとしていることは、確かに湊なら可能ではあるが、それにしても一線を超えている。

「篠原ってやつをクビにしたい。ここの会社の社長とアポとってくれれば、俺が直接話す」

「明日からも休みなく撮影入ってる人が、何言ってるんですか。それに、もしそんなことをして、仮屋さんの立場がより一層悪くなったらどうするんですか?仮屋さんのせいでクビにされたと、その男が逆恨みするかもしれませんし、社内で噂がまわれば、仮屋さんは会社に居づらくなりますよ」

「確かにそうだな……」

 珍しく素直に自分の話を聞く湊に、町田は少しいい気分になって、言葉を続けた。

「とりあえず、様子見です。もし、篠原という男が何かしでかしたら、その時は会社ごと潰してしまいましょう!湊さんなら、それが可能なので!」

 町田は深夜のテンションで、冗談のつもりで言ったのだが、湊はそれに真剣に聞き入り、自分の中で答えが出たようだった。