「どうした、そんなにイライラして。生理か?」

 香奈子はニッコリと笑い、篠原の隣にあるティーバッグを取って言った。

 「篠原チーム長、いいこと教えてあげましょうか?そういうのセクハラって言うんですよ」

 「元彼に対して随分な言い草だな」

 篠原が笑いながらそう言うと、香奈子はわざとげんなりとした顔で篠原を見た。
 

篠原と香奈子は一年前まで恋人同士だった。と言っても恋人だと思っていたのは篠原だけで、香奈子は会社で女性人気が高かった篠原を手に入れることで、自分の価値を高めようと、篠原を利用していただけだったが。

「それで、聞きたいことって?」

「実は、仮屋のことなんだけど……」

 香奈子は思わず口をあんぐり開けた。

 この会社の男は口を開ければ紫遥のことばかり。あの女の何がそんなにいいのか。

特に香奈子の目の前にいるこの男は、特に紫遥にご執心のようだった。