「俺、絶対仮屋さんは一般人じゃないと思ってたわ」

 「なんで?」

 「だって、明らかにオーラが違うじゃん。他の人と。ちょっとした仕草も上品だしさ」

 「そう言われてみると確かに。指先の動きまで可憐に見えるな……」

 「あー元々無理とはわかってたけどさ、本当に高嶺の花になっちゃったなあ」

 男たちがそんなことを言い合いながら、紫遥に熱い視線を向けていた。

 
 何が「指先の動きまで可憐に見える」だ。香奈子は馬鹿な男たちに苛立ちながらも、席を立った。



 給湯室をバンッと勢いよく開けると、篠原がインスタントコーヒーをいれているところだった。

 「お、いいところに。ちょうど安藤に聞きたいことがあったんだよ」

 「……何ですか」
 
 香奈子の不機嫌そうな様子を察して、篠原が怪訝な顔で手を止める。